見慣れた部屋の風景が、マーブル模様に歪み始めた [生活]

勿論、こんな代物を、『自分の作品でございます』と発表しようと考えるほど、恵二は図々しくも無いし馬鹿でもない。

要するに、自分の好きな、良く知っている作品のキャラクター設定を、ちょっと拝借してオリジナルな味付けをして、とにかく一つの物語を書き終え、経験値を上げるのが狙いなのだ。
魔根
キャラクターの設定や相関関係に頭を悩ませないで済む分、ストーリーや言い回しに集中することで、思惑通り、これまでになく筆を進めることが出来た。

書き溜めてきた文章を読み返しながら、恵二は、少し冷めてしまったコーヒーを口に運び、そこで、さっきの出来事を思い出した。

「願いの叶う魔法のペンか・・・」

ブルゾンのポケットから取り出したペンは、鮮やかな色彩のマーブル模様で彩られていて、眺めているとグルグル目が回りそうな気がした。

パソコンデスクの上を片付けて、もう一度、引き出しを掻き回し、探し出したレポート用紙を広げる。

本来ならば、原稿用紙を使うところなのだろうが、手書きよりもワープロ世代の恵二の部屋には、原稿用紙なんてものが存在する訳も無く、とりあえずはこれで我慢する。

マーブル模様のペンを使って、

『無限のヒーロー』

と、大きく題字を書いてみた。

「ふむふむ・・・」

 その下に、

『作、神野 啓二』

と、続ける。

「うん、何か、いい感じじゃない・・・」

お世辞にも達筆とは言い難い、自らが書いた題字を眺めていると、恵二の視界がグルグルと回りだし、見慣れた部屋の風景が、マーブル模様に歪み始めた。
黒倍王
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